


安部被告、調書でエイズ禍容疑認める



薬害エイズ事件で、業務上過失致死罪に問われた元帝京大副学長・安部英(たけし)被告(84)の公判が三十日、東京地裁(永井敏雄裁判長)で開かれた。この日、永井裁判長は、安部被告の検事調書を証拠として採用し、検察側が調書の要旨を読み上げた。安部被告は公判で無罪を主張しているが、調書では「エイズの危険を軽く見て、自分のメンツや製薬会社への配慮などを優先させた。自己の過ちを認め謝罪します」などと容疑を認めていた。
また、裁判長は、安部被告が体調不良のため、検察、弁護側による被告人質問は行わず、次回の七月二十六日に検察側の論告求刑を行うことを決めた。
調書の要旨によると、安部被告は「エイズに関する知識で、帝京大病院の医師は情けないことにみな私におんぶに抱っこ。(安全とされた)クリオ製剤への転換は、私しか決断し得なかった」と主張。「今から考えれば、(当時の)助教授のクリオ製剤への転換の進言は正しく、自己の誤りを認めざるを得ない」と述べていた。
当初、クリオ製剤の欠点を指摘していたことについて、安部被告は「当時、マスコミから(非加熱製剤を出荷していた)ミドリ十字の便宜を積極的に図っていたと非難されたので、(クリオ製剤の欠点を)大げさに述べただけだった」と供述。そのうえで、「被害者は、私が非加熱製剤の使用を中止させなかったためにエイズに感染したことになり、申し訳なく思う」と、謝罪の言葉も述べていた。
(5月30日)

|