薬害エイズ事件で、業務上過失致死罪に問われ、禁固三年を求刑された元厚生省生物製剤課長松村明仁被告(59)の公判が二日、東京地裁(永井敏雄裁判長)で開かれ、弁護側は最終弁論で「当時と現在の知識を峻別(しゅんべつ)して事実認定されれば、被告の無罪は明らか」とあらためて全面無罪を主張した。
弁論は午後にかけて続き、夕方近くに松村被告が最終陳述し、一九九七年三月の初公判から四年を経て結審する予定。
弁護側はまず「検察側は、後になって何も対応しなかった過失があるとして立件しており、このようなことの正当化は無限に犯罪が成立していくことになり容認できない」と厳しく批判した。
その上で、エイズウイルス(HIV)に汚染されていたとされる輸入非加熱血液製剤の危険性に対する認識を、「エイズの高い発症率を指摘していた国内外の文献は当時なかった。エイズウイルスの世界的権威も『発症率などは分かっていなかった』と証言している」と述べた。
さらに「加熱製剤の副作用への不安は強く、直ちに回収することはできなかった」と検察側に反論した上で、「当時の厚生省の対応には裁量権の逸脱はなく違法性はない。被告が刑事責任を問われることはない」と結論付けた。
起訴状によると、松村被告は、非加熱製剤で多くの患者をエイズで死亡させることを予見できたのに、医師に投与を控えさせたり、製薬会社に回収させたりするなどの注意義務を怠り、八五年五〜六月と八六年四月に血友病と肝臓病の男性患者にそれぞれ投与し死亡させた。
薬害エイズ事件では、旧ミドリ十字の歴代三社長が昨年二月に大阪地裁で禁固二年〜一年四月の判決を受け、控訴審公判中。元帝京大副学長安部英被告(84)は禁固三年を求刑され、今月二十八日に東京地裁で判決が言い渡される。
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