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薬害エイズ事件
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旧ミドリ十字 歴代3社長実刑 大阪地裁判決



判決の骨子

▽一九八六年一月の加熱製剤の販売開始時点で、非加熱製剤の危険性の認識は可能だった

▽被告らには販売中止など被害発生を防止する注意義務を怠った過失がある

▽厚生省係官に過失のある者が存在した場合でも、被告らの責任は大幅には軽減されない


 薬害エイズ事件で、エイズウイルス(HIV)に汚染された非加熱血液製剤を継続出荷し、病院で投与された男性を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた製薬会社・旧ミドリ十字(大阪市、吉富製薬と合併)の松下廉蔵被告(79)ら歴代三社長に対する判決公判が二十四日午前、大阪地裁で開かれた。

 三好幹夫裁判長は「営業上の利益を優先させて非加熱製剤の危険性を軽視し、販売中止や回収措置をとらなかった過失は極めて重く、実刑は免れない」として、三人に禁固二年―一年四月(求刑・同三年―二年六月)の実刑を言い渡した。

 薬害で刑事責任が認定されたのは初めて。この事件は「産・官・医」の複合過失とされ、今回の厳しい判決は、被告側が無罪を主張し東京地裁で審理中の厚生省、帝京大両ルートの公判にも大きな影響を与えそうだ。三人は控訴した。

 量刑は、非加熱製剤出荷当時の社長の松下被告が禁固二年、副社長兼研究本部長の須山忠和被告(72)は同一年六月、専務兼製造本部長の川野武彦被告(69)が同一年四月。

 判決によると、松下被告らは、安全な加熱製剤が発売された一九八六年一月以降も非加熱製剤の出荷、販売を中止せず、回収も怠った結果、同年四月、関西の病院で肝臓病治療のため非加熱製剤三本を投与された男性患者をHIVに感染させ、約九年後に死亡させた。

 判決で三好裁判長は、被告三人が非加熱製剤の危険性を認識することが可能だった時期について「加熱製剤販売開始の八六年一月十日時点」と認定した上で、「血友病の特性から当時、非加熱製剤の欠品を出すことはできなかった」との被告側の主張に対し、「加熱製剤の供給時点では非加熱製剤の有用性は全面的に否定されるべきで、加熱製剤は需要を満たすだけの十分な入庫もあった」と判断した。

 さらに三好裁判長は、「医薬品の安全性確保は製薬会社が第一次的かつ最終的責任を負うべきだ」と厳しく指摘。「ミドリ十字は米国子会社からエイズの最新情報を入手することができる状況にあった。厚生省の安全対策を所管する部局等に過失のある者が存在したり、医療機関に過失があったりしたとしても、被告らの罪責を大幅に軽減する理由にはならない」と述べ、「厚生省から回収命令などがなかった」と責任転嫁を図った被告側主張を退けた。

 量刑事情で、三好裁判長は「エイズは当時、まだ医学的に解明されていなかったが、非加熱製剤による被害発生の因果関係を疑わせる合理的理由があった。被告らはそれぞれの立場と責任において厳格に調査し、適切な対応をしなければならなかった」と指摘。亡くなった男性患者にも言及し、「全身の関節の痛みに耐え、やせ衰えながら妻に支えられて二年余りの壮絶な闘病生活を送り、ついに力尽きてこの世を去った。肉体的、精神的苦痛は想像を絶する」と述べた。

 その上で判決は、各被告の量刑を判断。松下被告については「人命を救うべき製薬会社の最高責任者としての自覚を著しく欠いた。厚生省の薬務局長としてサリドマイド事件の和解交渉に関与し、薬害の悲惨さを経験しながら、非加熱製剤の危険性を公表しないばかりか、原料の虚偽宣伝を容認した」などと、過失が最も重いと指弾した。

 「エイズの日本上陸の可能性は皆無に近い」などとの社内文書を作成した須山被告については「医学研究者としての良識に反する行為」と判断。川野被告も「非加熱製剤の製造記録を改ざんすることまで指示した」とし「三人の刑事責任は重く、禁固の実刑は免れない」と結論付けた。判決後三人は収監され、それぞれ保釈を申請した。

 薬害エイズ事件では、このほかに元厚生省生物製剤課長松村明仁(58)、元帝京大副学長安部英(たけし)(83)両被告が業務上過失致死罪で起訴され、審理が続けられている。食品を含めた公害事件で原因企業の社長や現場責任者の刑事責任が問われたケースとしては、五〇―六〇年代の森永ヒ素ミルク、水俣病、カネミ油症の各事件がある。ヒ素ミルクでは工場長は無罪、製造課長が有罪。カネミ油症では社長が無罪、工場長が有罪となった。水俣病では社長、工場長とも有罪だった。有罪判決には、いずれも執行猶予が付いていた。

 丸田和生・厚生省医薬安全局長「判決は厳粛に受け止めなければならないと考えている。再発防止のための取り組みに全力を尽くしてきたところであり、今後とも万全を期したい」

 吉富製薬は判決を受け、「亡くなられた被害者ならびにご遺族の皆様に改めておわび申し上げる。再びこのような医薬品による被害が生じることのないよう、引き続き最善の努力を尽くしていきたい」とのコメントを出した。

(2月24日)






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