


安部被告来春にも判決 厚生省ルートは結審来年か



「産・官・医」の複合過失とされる薬害エイズ事件で大阪地裁は製薬企業の歴代トップに厳しい実刑判決を下したが、東京地裁では、エイズ発症の危険性をいつ認識したかなどを争点に、血友病患者の死について過失責任を問われた元帝京大副学長・安部英被告(83)と、「厚生省ルート」の元同省生物製剤課長・松村明仁被告(58)の審理が続いている。
検察側は、〈1〉米国国立がん研究所のギャロ博士が一九八四年五月、エイズウイルスを確認したとする論文を公表した〈2〉同年九月、安部被告が担当していた血友病患者の半数近くがエイズウイルスに感染していた――などから「八四年中には、非加熱製剤を投与すれば、エイズ発症の危険性があったことを十分認識できた」と強調。
これに対し、弁護側は「八五年半ばを過ぎても、エイズウイルスの特徴は十分明らかになっておらず、危険性は予測できなかった」と、無罪を主張している。
公判は年内にも結審し、来春ごろまでには判決が言い渡される見通しだ。
一方、血友病と「第四ルート」の被害双方の責任を問われた松村被告の裁判では、弁護側立証が昨年七月から始まっている。
検察側は、松村被告も八四年中にはエイズ発症の危険性を認識できたから、非加熱製剤の使用・販売の中止や回収の措置を取る義務があったのに、それを怠った「不作為」の過失があると主張。弁護側は「八五年暮れの時点でもエイズウイルスの性質はよく分かっていなかったうえ、使用・販売の中止などを求める権限も義務もなかった」として、危険性認識の時期だけでなく、職務上の義務の点からも反論している。
弁護側立証の後、被告人質問が行われる予定で、結審も来年になりそうだ。
(2月24日)

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