帝京大病院第一内科長兼血液研究室の主宰者だった安部被告は同病院に通院していた血友病男性患者に対し、部下の医師に一九八五年五―六月にかけ三回にわたり非加熱製剤を投与させ、九一年十二月にエイズで死亡させたとして起訴された。
裁判では、1)帝京大病院内の安部被告の職務と権限、2)非加熱製剤投与でHIV感染させエイズで死亡させる危険性をどの程度認識できたか、3)生命に危険がない場合、感染危険の少ないクリオ製剤を使うなど、非加熱製剤に代わる治療法はあったか―などが争点になった。
検察側は「非加熱製剤の危険性を十分知り得たのに、何の安全措置も取らなかった」としたのに対し、弁護側は「当時はHIV感染率やエイズ発症率は低いとされていた」などと全面無罪を主張している。