当時の医学水準では過失ないと判断
東京地裁は28日、薬害エイズ事件で業務上過失致死に問われている元帝京大学副学長で医師の安部英被告に対する判決公判を開き、永井敏雄裁判長は被告に対し当時の医学水準などから輸入非加熱血液凝固因子製剤を投与し続けたことによる過失はないと判断し、無罪判決を言い渡した。検察側は控訴する模様だ。
裁判は、昭和60年5月から6月にかけて帝京大病院で輸入非加熱血液凝固因子製剤を投与された血友病患者(死亡)の遺族が訴えていたもの。検察側は、内外の文献や同病院の受診患者の抗体検査陽性の状況などから少なくとも昭和59年11月には、非加熱製剤を投与することはエイズを発症させる感染の危険性を認識し得たとして、禁固3年を求刑していた。
それに対し判決理由では、当時の医学水準では、@感染ウイルスの性質や意味が明確ではなかった、A被告は非加熱血液凝固因子製剤の投与が高い確率でHIVに感染させるものと認識されていなかった、B非加熱血液凝固因子製剤の使用は、従来の治療法に比べ有効性が高い――と指摘し、非加熱血液製剤を投与し続けた被告に過失はないとの判断を下した。