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1998年3月24日

薬害エイズ:
安部被告が治験を調整−−製薬会社元課長が証言


 薬害エイズ事件で業務上過失致死罪に問われた前帝京大副学長、安部英被告(81)の第16回公判が24日、東京地裁(永井敏雄裁判長)で開かれた。製薬会社「トラベノール」(現バクスター)の元課長(52)が検察側証人として出廷し、1983年11月に加熱製剤の臨床試験の統括医だった安部前副学長から「1、2社のさきがけは許さない」と言われたと証言した。当時、厚生省は加熱製剤の治験を急ぐよう各社に指示していたが、安部被告が開発が遅れていたミドリ十字など国内企業のため先行メーカーに圧力をかけ、治験を調整したことが改めて裏付けられた。

 証言によると、元課長は83年11月、臨床試験の統括を依頼した安部前副学長と面談した。この際、安部前副学長は臨床試験や厚生省への承認申請は各社横並びの一括で行うと説明。さらに「1、2社のさきがけは許さない」と付け加えた。また、安部前副学長は「社長あてに50万円の寄付を求めているがどうなっている」と確認を求めたという。

 翌12月には安部前副学長が東京都内のホテルに製薬8社を集め、同様に一括で治験を行う方針を伝えた。同席した他の教授から異論が出されたが、製薬会社からは異論が出されず、事実上承認された。

 元課長は「臨床試験は各社がそれぞれの事情で行うものと思っていたので安部先生の方針には当惑した。米国の本社も驚き『主導権を握るにはどうしたらいいか』と問い合わせがあった」と述べた。また、当時、同社など製薬会社は厚生省から求められていなかった健常者を対象にした臨床試験(第1相試験)を安部前副学長から実施するよう求められた。元課長は「必要のない試験を行わせることでわが社の先行を防止しようとしたのではないかと思う」と証言した。

 一方、この日、検察側証人として出廷した製薬会社「カッター・ジャパン」の元課長(59)は84年に加熱製剤の臨床試験に絡み、安部前副学長と接触を重ねる中で、研究費名目で130万円を要求され、支払ったことを明らかにした。要求は同社の社長あてに送られてきた手紙に書かれ、金額が指定してあったという。

 83年11月、厚生省は早く加熱製剤を開発させようと、第1相試験を省いて治験を行うよう各社にガイドラインを示したが、直後に安部被告が第1相試験を行うよう指示を変更した。翌84年1月には、製薬各社に寄付を求めたことを忠告された安部被告が、怒って「治験統括医を降りる」と言い出し、さらに数カ月治験の開始が遅れた。

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