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第3 本件被害者のエイズ発症・死亡原因 関係証拠によれば,本件被害者がHIVに感染した時期は,昭和60年5月10日ころから同年7月8日ころまでの間であったと推認される。そして,本件被害者は,この期間中に,同年5月12日,同年6月6日及び同月7日の3回にわたり,帝京大学病院第一内科において,手首関節内出血の止血治療のため,外国由来の非加熱第8因子製剤であるクリオブリンを投与されたことが認められる一方,本件投与行為以外の原因によりHIVに感染した証跡はない。これらの事情に照らせば,本件被害者は,本件投与行為によりHIVに感染したものと推認するのが相当である。また,関係証拠によれば,本件被害者は,HIV感染に起因する悪性リンパ腫により,平成3年12月に死亡したものと認められる。 第4 エイズ研究班当時までの事実関係の概要 4.1 エイズの発生等 エイズは,その病原ウイルスの分離・同定前である昭和57年に米国で定義がなされた疾患概念であるが,米国のエイズ患者の報告数は,昭和56年の最初の症例報告以降,増加の一途をたどり,昭和58年半ばころには,西欧諸国等においても数十名程度のエイズ発生が報じられるに至っていた。そして,エイズ患者の予後については,その死亡率が極めて高いことが当初から広く知られていた。 エイズの原因については,様々な説が主張されていたところ,「サイエンス」誌昭和58年5月20日号には,後にHIVを最初に分離したと評価されたシヌシ博士,モンタニエ博士らの新たなレトロウイルス(LAV)の分離を報告した論文が掲載されたが,同号には,HTLV−Tがエイズと関係があるという趣旨のギャロ博士らの論文なども掲載されていた。 4.2 エイズ研究班 厚生省薬務局生物製剤課の郡司篤晃課長は,昭和57年暮れころから,米国で血友病患者からエイズ発症者が出たとの情報に接するなどして,我が国の血友病患者にもエイズが伝播する危険性があるとの危機感を抱き,我が国におけるエイズ発生状況の調査及び血液凝固因子製剤に関するエイズ対策を検討するため,エイズ研究班を設置することとし,被告人がその主任研究者(班長)に選ばれた。 エイズ研究班においては,エイズの疑いのある症例のアンケート調査によって報告された症例について,それがエイズに該当するか否かの検討が行われた。ここでは,昭和58年7月5日に帝京大学病院第一内科において死亡した血友病B患者の症例(帝京大1号症例)が検討の対象となり,被告人は同症例がエイズであると強く主張したが,他の班員の反対によって,エイズと認定することは見送られた。 また,血液凝固因子製剤に関するエイズ対策として国内自給体制が議論され,班員からは,第8因子製剤を自国で賄うことを現実的な目標にするのであれば,クリオ製剤を併用すべきである,患者の便利もある程度犠牲にすべきではないかなどといった意見も出されたが,被告人は,非加熱製剤の治療効果や自己注射療法における利点などを強調してこれに反対し,血液製剤対策の検討のため,風間睦美帝京大学教授を委員長とする血液製剤小委員会が設置されることになった。 血液製剤小委員会においては,クリオ製剤の評価,加熱第8因子製剤,原料血漿の問題などが討議項目となった。その結果,加熱製剤については治験を行うべきであるとされ,クリオ製剤については,血友病乳幼児の軽・中等度の出血及び血友病年長児・成人の軽度の出血,皮下出血などが「相対的適用(クリオでも治療可能なもの)」とされたが,成人の関節内出血等のほとんどの出血については,「クリオでは確実な治療が不可能なもの」とされた。
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